大切な写真や仕事のファイルを管理するために、NAS(ネットワーク接続ストレージ)を導入する人が増えています。
NASの大きな利点のひとつは、複数のハードディスクを組み合わせてデータの保護や高速化を実現する「RAID」という機能です。
しかし、RAIDには様々な種類があり、「どのRAIDを選べばいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、NASのRAIDについて、初心者でも簡単に理解できるよう、
- その種類や仕組み
- メリット・デメリット
を分かりやすく解説します。
さらに、
- 家庭や中小企業といった用途に合わせた最適なRAID構成
- おすすめのNAS
も紹介します。
これを読めば、あなたのNASに最適なRAIDを選び、大切なデータを安全に管理できるようになります。
RAIDの基礎知識と役割
RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のハードディスク(HDD)を1つの論理的なドライブとして扱う技術です。
NASの性能と信頼性を高めるために不可欠な機能です。
大きく分けて2つの役割があります。
RAIDの主な目的はデータ保護
RAIDの最大の目的は、データの保護です。複数のHDDにデータを分散して保存することです。
たとえ1台のHDDが故障しても、データが失われることを防ぐことができます。
これは、NASのデータ保護において最も重要な機能です。
注釈:
- 論理的なドライブ: 物理的に複数のHDDがあるにも関わらず、PCからは1つの大きなHDDとして見える状態のことです。


RAIDの役割はパフォーマンス向上も
RAIDには、データの読み書き速度を向上させる役割もあります。
複数のHDDにデータを同時に書き込むことで、単一のHDDよりも高速なアクセスを実現します。
注釈:
- 読み書き速度: HDDからデータを読み出したり、HDDにデータを書き込んだりする速さのことです。

NAS RAIDの種類と特徴を比較
RAIDには、その構成によって様々な種類があります。
ここでは、NASでよく使われるRAIDの種類とその特徴を比較します。
RAIDの種類とメリット・デメリット
RAID 0 (ストライピング)
- 必要なHDD台数: 2台以上
- 容量の利用効率: 100%
- データの冗長性: なし
- 読み書き速度: 高速
- メリット: 最も高速な読み書き速度を実現します。
- デメリット: 1台でもHDDが故障すると、データが全滅してしまいます。

RAID 1 (ミラーリング)
- 必要なHDD台数: 2台以上
- 容量の利用効率: 50%
- データの冗長性: 完璧なミラー
- 読み書き速度: 普通
- メリット: 1台HDDが故障しても、別のHDDに完全なデータのコピーがあるため、データが残ります。
- デメリット: 容量の効率が悪く、例えば2TBのHDDを2台使っても、使える容量は2TBです。

RAID 5 (パリティ)
- 必要なHDD台数: 3台以上
- 容量の利用効率: (n-1)/n
- データの冗長性: パリティ
- 読み書き速度: 高速
- メリット: 容量と速度のバランスが良く、最も広く使われています。HDD1台が故障してもデータを復旧できます。
- デメリット: HDD2台が同時に故障すると、データが全滅します。
注釈:
- パリティ: データの誤りを見つけたり、復旧させたりするための情報のことです。

RAID 6 (二重パリティ)
- 必要なHDD台数: 4台以上
- 容量の利用効率: (n-2)/n
- データの冗長性: 二重パリティ
- 読み書き速度: 高速
- メリット: HDD2台が同時に故障してもデータを保護できます。企業など、高い耐障害性が必要な環境に適しています。
- デメリット: RAID 5よりも容量の効率が悪く、再構築に時間がかかります。
注釈:
- 二重パリティ: 2つの異なるパリティ情報を持つことで、より高いデータ保護能力を持たせることです。

RAID 10 (ミラーリング+ストライピング)
- 必要なHDD台数: 4台以上
- 容量の利用効率: 50%
- データの冗長性: 完璧なミラー
- 読み書き速度: 最も高速
- メリット: 高速性と耐障害性を両立できます。
- デメリット: 容量の効率が悪いです。

JBOD (Just a Bunch Of Disks)
- 必要なHDD台数: 2台以上
- 容量の利用効率: 100%
- データの冗長性: なし
- 読み書き速度: 普通
- メリット: HDDの容量をフルに活用できます。
- デメリット: HDD1台でも故障すると、そのHDD内のデータは全滅します。

RAID5とRAID6の比較
RAID5とRAID6は、家庭から中小企業まで幅広く使われるRAIDです。
RAID5はHDD1台分のパリティ情報を作成します。
RAID6はHDD2台分のパリティ情報を作成することで、より高い耐障害性を実現しています。
項目 | RAID 5 | RAID 6 |
必要なHDD台数 | 3台以上 | 4台以上 |
耐障害性 | HDD1台の故障まで | HDD2台の故障まで |
パリティ情報 | 1台分の容量を消費 | 2台分の容量を消費 |
データ書き込み速度 | RAID 6より高速 | RAID 5よりやや低速 |
実効容量 | (HDD台数 – 1) x HDD容量 | (HDD台数 – 2) x HDD容量 |
再構築時間 | RAID 6より短い | RAID 5より長い |

RAIDの再構築とRAID崩壊
RAIDを構成しているHDDが故障した場合、NASは自動的にデータを再構築(リビルド)します。
この作業中は、NASのパフォーマンスが低下したり、作業に時間がかかったりすることがあります。
RAIDの再構築中に別のHDDが故障すると、データが全滅する「RAID崩壊」が発生する可能性があります。
注釈:
- 再構築(リビルド): 故障したHDDを新しいものに交換した際に、残りのHDDのデータとパリティ情報から元のデータを復元する作業のことです。


用途別おすすめRAID構成
家庭や中小企業など、NASの利用目的によって最適なRAID構成は異なります。
ここでは、用途に合わせた最適なRAID構成を紹介します。
家庭用NASにおすすめのRAID
家庭用NASでは、データの安全性と導入の手軽さが重要です。
- RAID 1: 2ベイNASを利用する場合に最もお勧めです。HDD1台分の容量しか利用できませんが、HDDが1台故障してもデータが保護されるため、初心者でも安心して使うことができます。
- RAID 5: 3ベイ以上のNASを導入する場合は、RAID 5がおすすめです。容量の効率が良く、HDD1台分の冗長性を確保できます。
注釈:
- 冗長性(じょうちょうせい): データの重複を持つことで、万が一の事態に備えることです。


中小企業向けNASの選び方とおすすめRAID
中小企業では、NASの可用性とセキュリティが重要になります。
- RAID 6: 4ベイ以上のNASを利用する場合は、RAID 6がおすすめです。HDD2台が同時に故障してもデータが保護されるため、より高い可用性を実現できます。
- RAID 10: 高速なアクセスが必要な環境(例:動画編集、大容量ファイルの共有)では、RAID 10が適しています。RAID 1とRAID 0を組み合わせた構成で、高速性と耐障害性を両立できます。
注釈:
- 可用性(かようせい): システムがいつでも利用できる状態を維持する能力のことです。


NASのRAID構築と設定方法
NASのRAID構築は簡単です。
- NASにHDDを複数インストールします。
- NASの管理画面にアクセス。RAID設定画面を開きます。
- 目的に合ったRAID種類を選択。画面の指示に従って構築します。



NASの価格相場(2024年〜2025年)
NASの価格は、
- ベイ数(HDDを何台搭載できるか)
- 搭載機能
- ハードウェアの性能
によって大きく異なります。
2024年から2025年の価格相場は以下の通りです。
家庭用NASの価格相場
- 2ベイモデル: 2万円~5万円
- 4ベイモデル: 4万円~10万円
- HDDは別途購入する必要があります。


中小企業向けNASの価格相場
- 4ベイモデル: 8万円~20万円
- 6ベイ以上: 20万円~50万円以上


家庭用NASおすすめ製品を比較
家庭用NASを購入する際に、RAIDを考慮して選ぶためのポイントと、おすすめの製品を紹介します。
家庭用NASの選び方
- ベイ数: 写真や動画の保存が主な目的なら2ベイ、将来の容量拡張も考えるなら4ベイがおすすめです。
- 搭載機能: スマホ連携やメディアサーバー機能など、用途に合った機能があるか確認しましょう。


おすすめの家庭用NAS製品一覧
メーカー | モデル名 | ベイ数 | 価格帯 | 主なRAID対応 | 特徴 |
Synology | DS224+ | 2ベイ | 4万円~5万円 | RAID 0, 1, JBOD | 初心者向け、豊富なアプリ |
Synology | DS423+ | 4ベイ | 7万円~9万円 | RAID 0, 1, 5, 6, 10, JBOD | 高性能CPU、多くのアプリ |
QNAP | TS-264 | 2ベイ | 5万円~7万円 | RAID 0, 1, JBOD | HDMI出力対応、仮想化 |
QNAP | TS-464 | 4ベイ | 9万円~11万円 | RAID 0, 1, 5, 6, 10, JBOD | PCIeスロット、高速 |

NASのデータ保護はRAIDだけでは不十分
RAIDはHDDの故障に備える機能ですが、データを完璧に保護するものではありません。
RAIDだけでは対応できないリスクもあります。
RAIDだけでは対応できないリスク
- 人為的なミス: ファイルの誤削除や上書き
- ランサムウェア: 外部からの攻撃によるデータの暗号化
- 物理的な災害: 火災、水害などによるNAS本体の損傷


NASのバックアップが不可欠な理由
これらのリスクに備えるためには、NASのバックアップが不可欠です。
バックアップは、NASとは別の場所にデータのコピーを作成することです。
内部リンク:NASのバックアップについては、別の記事で詳しく解説しています。
→「NASバックアップソフト徹底比較!自動化でデータ保護を完璧に」


2025年NASの注目トレンド
2025年のNAS市場では、いくつかの注目すべきトレンドが見られます。
AI機能の搭載
NASにAI(人工知能)を搭載するモデルが増えています。
AIを活用することで、
- 写真の自動分類
- 顔認証
- 不正アクセス検知
など、これまで実現できなかった機能が可能になります。


高速なネットワーク環境への対応
5Gの普及やWi-Fi 7の登場により、NASの高速なアクセスが可能になります。
NASも10G Ethernetポートを搭載するモデルが増えています。
大容量のファイルを高速に転送できるようになります。
注釈:
- 10G Ethernet: 従来の1G Ethernetよりも10倍速い通信速度を持つネットワーク規格です。


よくある質問
RAID 1は本当に安全ですか?
A. RAID 1は、HDDが1台故障してもデータが保護されています。
家庭での使用には十分安全です。
ただし、NASの盗難や火災といった物理的な障害には対応できません。
バックアップを併用することで、より安全にデータを管理できます。

どのNASメーカーがおすすめですか?
A. SynologyとQNAPが市場の2大メーカーとして知られています。
- SynologyはOSが直感的で初心者向け
- QNAPは多機能でカスタマイズ性が高い
のが特徴です。
用途や知識レベルに合わせて選ぶと良いでしょう。

NASの設定は難しいですか?
A. 最近のNASは、簡単なセットアップウィザードを搭載しています。
パソコンやスマホから簡単に設定できます。
RAIDの構築も自動で行ってくれる機種が多いため、初心者でも安心です。
Buffalo LinkStationのすべて!設定からトラブル解決まで徹底解説

RAID構築は用途と目的を明確にしてから
NASのRAIDは、HDDの故障に備える重要な機能です。
- 家庭ではRAID 1やRAID 5
- 中小企業ではRAID 6やRAID 10
といったRAIDを構築することで、データの保護と可用性を両立できます。
しかし、RAIDは万能ではありません。
- ランサムウェア
- 人為的なミス
に備えるためには、必ず別の場所へのバックアップも行ってください。
この記事で紹介した情報を参考に、あなたのNASのRAID構成を見直してみてはいかがでしょうか。
より安全なデータ管理を実現しましょう。
