NAS(Network Attached Storage)は、家庭やオフィスでデータを一元管理します。
複数人で共有するための便利な機器です。
しかし、NASはネットワークに接続されています。
そのため、常にサイバー攻撃や不正アクセスのリスクに晒されています。
特に近年、NASを狙ったランサムウェア(データを勝手に暗号化して身代金を要求する悪質なソフトウェア)による被害が多発しています。
「NASを使っているけれど、セキュリティ対策は何もしていない」
「どうやってデータを守ればいいかわからない」
という方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、NASのデータを守るための具体的なセキュリティ対策を初心者にも分かりやすく解説します。
ランサムウェアや不正アクセスから大切なデータを守る方法を学び、安心してNASを運用しましょう。
NASを狙うサイバー脅威とその手口
NASのセキュリティを考える上で、まずどのような脅威が存在し、どのような手口で攻撃されるのかを理解することが重要です。
ランサムウェアとマルウェア感染
ランサムウェアは、NASに保存されたファイルをすべて暗号化し、復元と引き換えに金銭を要求するマルウェアの一種です。
感染経路は、
- フィッシングメール
- 悪意のあるウェブサイト
- 脆弱性を放置したNAS
など多岐にわたります。
一度感染すると、被害は深刻で、大切なデータが永久に失われる可能性もあります。

不正アクセスと情報漏洩
- NASがインターネットに直接公開されている場合
- 推測しやすいパスワードを使っている場合
不正アクセスされるリスクが高まります。
不正アクセスによって、個人情報や企業の機密情報が盗まれたり、改ざんされたりする可能性があります。
今すぐできる基本的な対策
NASを導入したら、まず最初に講じるべき基本的なセキュリティ対策について解説します。
これらは、初心者でも簡単に設定できる重要なポイントです。
パスワードとアカウント設定の最適化
NASへのアクセスは、セキュリティの第一歩です。
デフォルトのユーザー名とパスワード(例: admin
, 123456
)は絶対に避けてください。推測されにくい複雑なパスワードに変更しましょう。
また、不要なアカウントは削除しましょう。
最低限のユーザーアカウントのみを作成することが重要です。

ファームウェアを常に最新に保つ
NASのOS(ファームウェア)は、定期的にアップデートが提供されます。
これらのアップデートには、新たな脆弱性を修正するためのセキュリティパッチが含まれています。
ファームウェアを常に最新の状態に保つことで、既知の攻撃からNASを守ることができます。
Windows Updateエラーコード対処法【完全ガイド】
NASへの外部アクセス設定の最適化
NASを外部からアクセスできるように設定する際は、以下の点をチェックしましょう。
- UPnPの無効化: ルーターのUPnP(Universal Plug and Play)機能は、NASが自動でポートを開放してしまう可能性があるため、無効化することが推奨されます。
- VPNの利用: 外出先からNASにアクセスしたい場合は、VPN(Virtual Private Network)の利用が最も安全です。VPN経由で接続することで、通信内容が暗号化され、安全性が格段に向上します。
【2025年最新】無料VPNは危険?安全なおすすめサービス比較

NAS 不正アクセスの兆候
NASが不正なアクセスを受けている場合、いくつかの兆候が見られることがあります。
早期に兆候に気づき、対策を講じることが重要です。
NASのアクセスログを監視する
NASの管理画面には、いつ、誰が、どのファイルにアクセスしたかという履歴(アクセスログ)が表示されます。
- 見慣れないIPアドレスからのログイン記録
- 特定のファイルへの不自然なアクセス履歴
がないか、定期的に確認しましょう。

不自然なファイルやフォルダを発見する
NAS内のファイルやフォルダが知らない間に削除されたり、名前が変更されたりしている場合。
不正アクセスの可能性が高いです。
また、身に覚えのないファイルが作成されている場合も注意が必要です。
特にランサムウェアは、ファイルを暗号化する前に、元のファイルを削除する傾向があります。

NASのパフォーマンスが低下する
NASのCPU使用率やネットワークトラフィックが不自然に高い状態が続く場合。
バックグラウンドでマルウェアが活動している可能性があります。
知らない間にデータが外部へ送信されているなど、不正な通信が行われていることも考えられます。

NASのウイルス対策
NAS自体にもウイルス対策を施すことが、安全な運用には欠かせません。
PCのウイルス対策ソフトだけでは、NASのデータを完全に守ることはできません。
なぜNAS専用の対策が必要なのか?
PCにインストールするウイルス対策ソフトは、あくまでそのPCを守るためのものです。
NASはOSがPCとは異なります。
PCのウイルス対策ソフトをNASに直接インストールすることはできません。
また、ネットワークを経由してNASに保存されたファイルは、PCのウイルス対策ソフトの監視をすり抜ける可能性があります。
NAS向けウイルス対策ソフトの役割
NAS向けに提供されているウイルス対策ソフトは、NAS内部のHDDに保存されているファイルを直接スキャンします。
ウイルスやマルウェアを検出・駆除する役割を担います。
これにより、NASに保存されたデータが感染源となることを防ぎます。

NASのセキュリティソフトおすすめ
主要なNASメーカーが提供する無料のセキュリティソフトと、より高度な保護を求める方向けの有料ソフトを紹介します。
Synologyのセキュリティソフト
- Security Advisor: NASのセキュリティ設定を総合的に診断し、改善策を提示するアプリです。パスワードの強度チェックや、不審なログインの検知など、広範囲なセキュリティチェックを行ってくれます。
- AntiVirus Essential: NASに保存されたファイルをスキャンし、ウイルスやマルウェアを検出・駆除する無料のウイルス対策ソフトです。スケジュールを設定して定期的にスキャンを実行できます。

QNAPのセキュリティソフト
- Security Counselor: SynologyのSecurity Advisorと同様に、NASのセキュリティ設定を分析。最適な対策をアドバイスしてくれます。
- Malware Remover: 既知のマルウェアをスキャンしてNASから除去する無料のアプリです。ランサムウェアにも対応しています。
- McAfee Antivirus: QNAPのApp Centerからインストールできる有料のウイルス対策ソフトです。リアルタイムスキャンや隔離機能など、より高度な保護を提供します。

ランサムウェア対策の具体的な方法
ランサムウェアは特に深刻な脅威です。
ここでは、ランサムウェアからNASを守るための具体的な対策方法を詳しく解説します。
NAS専用のウイルス対策ソフトウェア
多くのNASメーカーは、NASにインストールできるウイルス対策ソフトウェアを提供しています。
これらのソフトウェアは、リアルタイムでNAS内のファイルをスキャンします。
マルウェアの侵入を検知・ブロックする機能を持っています。
- Synology: Synology AntiVirus Essential
- QNAP: Malware Remover
スナップショット機能の活用
スナップショットは、ある時点でのNASのファイルの状態を記録する機能です。
ランサムウェアに感染した場合でも、感染前のスナップショットに戻すことで、データを迅速に復元できます。
これは、NASのデータを保護する上で最も有効な対策の一つとされています。

SMBプロトコルの設定を見直す
Windows PCとのファイル共有に使われるSMB(Server Message Block)プロトコルは、古いバージョンに脆弱性が存在する場合があります。
NASの設定画面で、SMBのバージョンを最新のもの(SMB3)に更新してください。
古いバージョン(SMB1)は無効化しましょう。
NASメーカーごとのセキュリティ対策
主要なNASメーカーであるSynologyとQNAPは、それぞれ独自のセキュリティ機能を提供しています。
Synologyのセキュリティ機能
- Synology Security Advisor: NASのセキュリティ設定をスキャンし、改善点を提案してくれる機能です。
- Synology Accountと2段階認証: 2段階認証を設定することで、不正ログインを防ぎます。
- ファイアウォール: 外部からのアクセスを制御するファイアウォール機能も搭載しています。
QNAPのセキュリティ機能
- QNAP Security Counselor: Synology Security Advisorと同様に、セキュリティチェックと改善提案を行います。
- QNAP IDと2段階認証: 2段階認証をサポートし、アカウントの安全性を高めます。
- QuFirewall: 高度なファイアウォール機能を提供し、不正な接続をブロックします。

最後に頼れる究極のデータ保護策
どんなに強固なセキュリティ対策を講じても、データ消失のリスクをゼロにすることはできません。
万が一の事態に備え、データを確実に守るための「究極の対策」を解説します。
バックアップの重要性
NASのセキュリティ対策の中で、最も重要かつ最後の砦となるのがバックアップです。
NASのデータは、NAS本体とは別の場所に保管することが鉄則です。
- 外付けHDD
- クラウドストレージ
- 別のNAS
にバックアップを取ることで、NASが故障したり、ランサムウェアに感染したりしても、データを復旧できます。
NASのバックアップ方法を徹底解説!故障に備える3つの方法とおすすめソフトウェア
3-2-1ルールの実践
バックアップの基本は「3-2-1ルール」です。
- 3: データを3つの場所に保存する
- 2: 2種類の異なるメディアに保存する
- 1: 1つは遠隔地(オフサイト)に保存する
このルールに従い、NASにRAIDを組んだ上で、さらに外付けHDDやクラウドにバックアップを取る「ハイブリッドバックアップ」を構築することで、データの安全性を極限まで高めることができます。

よくある質問
Q1. NASのウイルス対策ソフトは有料ですか?
A. 多くのNASメーカーが提供する基本のウイルス対策ソフトは無料で利用できますが、高度な機能やリアルタイムスキャンには有料版が必要になる場合があります。
Q2. NASのセキュリティ対策を怠るとどうなりますか?
A. NASへの不正アクセス、個人情報や機密データの漏洩、ランサムウェアによるデータ暗号化、そして最悪の場合、データが永久に失われる可能性があります。
Q3. NASのポート開放は安全ですか?
A. ルーターの設定でNASのポートを開放する行為は、セキュリティリスクが非常に高いため推奨されません。
特別な理由がない限り、開放は避けましょう。
リモートアクセスにはVPNを利用しましょう。