「Windows 10 LTSCってよく聞くけど、HomeやProとどう違うの?」
「会社のPCが急にアップデートされて不具合が…安定したOSはないの?」
パソコン初心者の方にとって、「Windows 10 LTSC」という言葉は少し馴染みが薄いかもしれません。
LTSCは、Microsoftが提供するWindows 10の特定のエディションです。
一般的なHomeやProとは異なる特徴を持っています。
特に、長期にわたるサポートと安定した動作が必要な環境で利用されることが多く、私たちのようにWindowsを使用して特定の業務を行うユーザーにとっては、その利点は非常に大きいものです。
今回の記事では、2025年最新の情報に基づいて、Windows 10 LTSCがどのようなOSで、なぜ特定の用途で選ばれるのかをパソコン初心者の方にも分かりやすく解説します。
- LTSCのメリット・デメリット
- サポート期間
- 入手方法
- インストール手順
まで、網羅したコンテンツを提供します。
これを読めば、あなたのPC環境にLTSCが最適な選択肢なのかが明確になるでしょう。
安定したシステム構築を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
Windows 10 LTSCとは何か?その基本を解説
Windows 10 LTSCは、「Long-Term Servicing Channel」の略で、Microsoftが提供するWindows 10 Enterpriseの特別なバージョンです。
一般的なWindows 10 HomeやPro、Enterprise(Semi-Annual Channel, SAC)とは異なります。
機能更新プログラムが提供されないことが最大の特徴です。
LTSCと通常版(SAC)の最大の違い

LTSCと通常版(SAC: Semi-Annual Channel)の最も大きな違いは、機能更新プログラムの提供頻度と内容です。
通常版 (SAC)
年に2回程度の頻度で大規模な機能更新(新しい機能の追加やUIの変更など)が提供されます。
これにより、OSは常に最新の状態に保たれますが、予期せぬ不具合や互換性問題が発生する可能性もあります。
LTSC
約2~3年ごとにリリースされ、リリース後はセキュリティ更新プログラムとバグ修正のみが提供されます。
新しい機能の追加やUIの変更は行われないため、一度インストールしたら長期にわたって安定した動作を維持できます。
このLTSCの性質は、システムの安定性が最優先される環境で特に重要な点となります。
LTSCで削除・無効化される主な機能
LTSCは安定性を追求するため、通常版に搭載されている一部の機能が削除されたり、無効化されたりしています。
- Microsoft Store: 標準では削除されています。必要な場合は別途インストールすることも可能ですが、LTSCの用途を考慮すると不要な場合が多いでしょう。
- Microsoft Edge: 標準のブラウザではなく、Internet Explorerが含まれています。
- Cortana: 音声アシスタント機能のCortanaは搭載されていません。
- Microsoft Solitaire Collectionなどのプリインストールアプリ: ゲームやエンターテイメント関連のアプリは含まれていません。
- OneDrive: クラウドストレージサービスのOneDriveも標準では搭載されていません。
これらの機能は、IT管理者がシステムの運用をシンプルにし、予期せぬ変更を防ぐために削除されていると考えられます。
LTSCが選ばれる理由と主な用途
なぜLTSCが特定の環境で選択されるのでしょうか?その理由と、主な用途を見ていきましょう。
長期的な安定稼働が求められる環境
LTSCは、一度インストールしたら長期間安定して動作し続けることが最優先される環境に最適です。
- 医療機器: 病院のCTスキャンやMRIなどの医療機器は、OSの予期せぬ更新によって誤動作を起こすことは許されません。LTSCは、こうした重要な機器の制御システムに組み込みんで使用されることが多いです。
- 工場の制御システム: 生産ラインを制御するPCも、OSの更新で動作が停止することは工場全体の生産に大きな影響を与えます。LTSCの安定性が業務の継続性を保証します。
- ATMやPOSシステム: ATMや店舗のPOSシステムなど、特定のアプリケーションが常に起動している必要があるデバイスもLTSCの主な用途です。
- サイネージやキオスク端末: 公共施設や店舗に設置されたデジタルサイネージや情報キオスク端末も、LTSCで安定した表示を行います。
厳密なシステム制御が必要な環境
IT管理者がOSの更新を厳密に制御したい場合にもLTSCは選択されます。
- 品質管理の徹底: 更新プログラムが提供されないため、テスト済みの環境を長期間維持できます。これにより、システムの品質と安定性を高度に保証できます。
- 帯域幅の節約: 頻繁な機能更新が行われないため、ネットワーク帯域幅の消費を抑えることが可能です。これは、多数のPCを管理する企業環境で重要な点です。
私が以前Windowsのシステムを担当していた際にも、現場の特定機器でLTSCが使用されていました。
更新による問題が発生しないため、運用コストや管理コストが大幅に削減されるという利点を実感しました。
LTSCのメリット・デメリットを徹底比較
Windows 10 LTSCの導入を検討する際に、メリットとデメリットを理解することは重要です。
LTSCのメリット
- 長期安定稼働: 最大のメリットです。機能更新がないため、一度インストールすれば何年も同じ状態で動作し続けます。特定のアプリケーションやデバイスとの互換性問題が発生しにくいです。
- セキュリティ更新のみ: OSの安定性を保ちつつ、セキュリティ更新プログラムは継続して提供されます。これにより、最新の脅威からシステムを保護できます。
- 予測可能な運用: 機能変更がないため、システムの動作が予測可能になります。IT管理者は、更新による影響を考慮する必要がほとんどありません。
- リソース消費の軽減: 余計なアプリや機能が含まれていないため、システムリソースの消費が少なく、軽快に動作します。また、バックグラウンドでの更新作業も少ないため、PCへの負荷が低減されます。
- メンテナンスコストの削減: 頻繁なアップデート対応や、それに伴うトラブルシューティングの手間が減るため、運用コストの削減に繋がります。
LTSCのデメリット
- 新しい機能が利用できない: LTSCは機能更新が行われないため、通常版Windows 10で追加される新機能や改善点を利用できません。最新のUIやサービスを使いたいユーザーには不向きです。
- ソフトウェア・ハードウェアの最新対応遅れ: LTSCがリリースされた時点での技術に基づいており、最新のソフトウェアやハードウェアが適切に動作しない可能性があります。特に、発売後の新しいPCや周辺機器は、LTSCでの動作が保証されない場合があります。
- 限定された入手方法: LTSCは一般の消費者向けには販売されていません。主に企業向けのボリュームライセンスや、特定の組み込みシステム向けに提供されます。個人で入手することは非常に困難です。
- 最新のセキュリティ機能が不足する可能性: セキュリティ更新プログラムは提供されますが、Windows DefenderのAIベースの機能強化など、OS全体を改善する最新のセキュリティ機能は提供されない可能性があります。
- Microsoft Storeがない: アプリのダウンロードや管理がMicrosoft Storeを通じて行えないため、必要なアプリは別途インストールする必要があります。
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これらのメリットとデメリットを比較し、あなたのPCの用途や環境に合っているかを検討することが重要です。
Windows 10 LTSCのサポート期間とバージョン
LTSCの大きな特徴である長期サポートについて、具体的な情報を見ていきましょう。
LTSCのサポートライフサイクル

LTSCは、リリース後に約5年間のメインストリームサポートと、その後の約5年間の延長サポートが提供されます。
つまり、合計で約10年間のセキュリティ更新プログラムとバグ修正が提供されることになります。
- メインストリームサポート: 新機能の追加や変更はないが、セキュリティ以外の修正も提供される期間。
- 延長サポート: セキュリティ更新プログラムのみが提供される期間。
この長期サポートにより、一度導入したら長期間安心して使用できる状態が維持されます。
主なLTSCバージョンとサポート終了日 (2025年最新版)
LTSCは数年ごとに新しいバージョンがリリースされます。
現在利用可能な主なバージョンと、そのサポート終了日は以下の通りです。
LTSCバージョン | リリース年 | メインストリームサポート終了日 | 延長サポート終了日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2015 (旧LTSB) | 2015 | 2020年10月13日 | 2025年10月14日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2016 (旧LTSB) | 2016 | 2021年10月12日 | 2026年10月13日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2019 | 2018 | 2024年1月9日 | 2029年1月9日 |
Windows 10 Enterprise LTSC 2021 | 2021 | 2027年1月13日 | 2032年1月13日 |
Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021 | 2021 | 2032年1月13日 | 2037年1月13日 |
※上記は一般的な情報であり、Microsoftの公式ページで最新のサポートライフサイクルを確認することをおすすめします。
2025年現在、LTSC 2015の延長サポートがまもなく終了します。
新規にLTSCを導入する場合は、LTSC 2021を選択するのが賢明でしょう。
LTSCの入手方法とインストール手順
Windows 10 LTSCは、一般の家電量販店やオンラインストアでは購入できません。
入手方法が限られています。
入手方法
- ボリュームライセンス契約: 企業や教育機関向けに提供されるMicrosoftのボリュームライセンス契約を通じて入手できます。LTSCを利用するには、通常Windows 10 Enterpriseのライセンスが必要です。
- 特定のデバイスへの組み込み: LTSCは、医療機器やPOSシステムなど、特定の組み込みシステムにOEMとして搭載されて提供されることが多いです。この場合、OS単体での購入はできません。
- Microsoft Partner: Microsoftのパートナー企業を通じて入手することも可能です。
個人でLTSCを入手することは、Microsoftの公式なルートではほぼ不可能です。
インターネット上で非公式なダウンロードサイトなども存在しますが、セキュリティ上のリスクやライセンス違反の問題があるため、絶対に使用しないでください。
インストール手順 (通常のWindows 10とほぼ同じ)
LTSCのインストール手順は、Windows 10の通常版とほぼ同じです。
- LTSCのISOファイルを入手します(正規のライセンスを通じて)。
- Rufusなどのツールを使用して、ISOファイルをUSBメモリに書き込み、インストールメディアを作成します。
- LTSCをインストールしたいPCにUSBメモリを接続し、起動します。
- BIOS/UEFI設定で、USBメモリから起動するように設定します。
- 画面の指示に従って、言語、時刻、キーボードレイアウトなどを選択し、インストールを開始します。
- ライセンスキーを入力し、パーティション設定を行います。
- インストールが完了すると、初期設定を行い、LTSC環境が利用可能になります。
インストール後は、セキュリティ更新プログラムの適用を忘れず行いましょう。
LTSCに関するよくある質問と解決策
ここでは、Windows 10 LTSCに関してよく寄せられる質問とその解決策をまとめました。
Q1: LTSCを個人で購入できますか?
A1: いいえ、LTSCは一般の消費者向けには販売されていません。
企業向けのボリュームライセンスか、特定の組み込みシステムへの搭載という形式でのみ提供されます。
個人でLTSCを利用することは、ライセンス上も技術的にも推奨されません。
個人の用途であれば、Windows 10 HomeやPro、あるいはWindows 11を利用するのが適切です。
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Q2: LTSCはWindows 11にアップグレードできますか?
A2: LTSCからWindows 11への直接アップグレードは、Microsoftの公式なアップグレードパスとしては提供されていません。
LTSCは長期安定運用向けに設計されており、機能更新を抑制することが目的だからです。
Windows 11への移行を検討する場合は、LTSC環境をクリーンインストールするか、通常版Windows 10からアップグレードすることを検討する必要があります。
Q3: LTSCでもMicrosoft StoreやEdgeは使える?
A3: LTSCは標準ではMicrosoft StoreやMicrosoft Edgeが搭載されていません。
これはシステムの安定性とリソース消費の抑制を目的としているためです。
ただし、必要な場合は、管理者の権限でPowerShellなどを使ってMicrosoft Storeをインストールできる可能性はあります。
しかし、LTSCの利点である安定性を損なう可能性があるため、推奨はされません。
まとめ:あなたのPCにLTSCは必要か?
この記事では、
- Windows 10 LTSCの基本
- その特徴
- メリット・デメリット
- サポート期間
- 入手方法
までを詳細に解説してきました。
LTSCは、頻繁な機能更新を避け、長期的な安定稼働を最優先する特定の業務用途や組み込みシステムに最適なWindows 10のエディションです。
医療機器、工場の制御システム、POSシステムなど、一度導入したら長期間変更を加えたくない環境でその真価を発揮します。
一般的なパソコンユーザーや、最新の機能やサービスを利用したい方には、Windows 10 HomeやPro、またはWindows 11が適しています。
これらのバージョンは常に最新の機能とセキュリティ対策が適用され、より快適なデジタルライフを提供します。
あなたのPCの用途や環境、そして求める安定性のレベルを考慮し、LTSCがあなたの必要に合っているかを慎重に検討してください。
もし不明な点があれば、Microsoftの公式サポートページやIT専門家に相談することをおすすめします。
参考文献・参考サイト
- Microsoft Learn: Windows 10 Enterprise LTSC (Long-Term Servicing Channel) の概要 https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows/whats-new/ltsc/overview